雨の訪問者

 シッチェスの治安は比較的良いようです。リゾート地なのでリゾート客に来てもらうため町中の防犯意識が高いように感じます。深夜まで続くイベントが多いせいか、12時過ぎても子供連れた女性が自由に歩きまわっているのを良く見かけます。スリ、引ったくり、置き引きなどもあまり聞いたことはありません。


 でもバルセロナは違います。バルセロナでは家内が空港でバッグを置き引きされ、中にはパスポート、財布、クレジットカード、レジデンスカード、ピソの鍵などが入っていました。シッチェスに来てからは夏も夜寝る時は窓を開けっ放しで寝ていたのですが、盗まれた中に日本人だと分かるパスポート、住所が分かるレジデンスカード、ピソの鍵が入っていたので、念のためピソの鍵を変え、寝る時には窓を閉めて寝るようにしました。


 2007年10月、その日は朝からすばらしい天気でした。寝ようとしたところすごい雨の音に昼に布団を干してそのままにしていることを思い出し、あわてて取り込みました。あわてていたのでそのとき窓の鍵を閉め忘れたのかもしれません。 

 激しい雨はその後も断続的に降り続き、またルディがうなされていたようなので寝つかれず4時ごろになって、リビングで本でも読もうと暗闇を歩いて行きました。

 リビングルームに入ろうとすると暗闇の中に誰か人が立っているように感じました。


 部屋は2階ですが外の街灯の明かりで部屋の中は電気をつけなくてぼんやりと見ることが出来ます。最初は見間違いかと思ったのですが、よく見ると黒い陰が手を前で回しているように見えました。泥棒、と思った瞬間鳥肌が立ちました。 外はまだ強い雨の音で大声を出しても近所に聞こえそうもありません。


 こちらの泥棒はグループで武装していることが多いので何とか外へ追い出したかったので、家中の電気をつけ、大声で怒鳴り、家内を起こすためにベッドルームへ走りました。  ベッドルームのドアを開け、「泥棒」と叫んで、入ろうと思ったのですがこのまま私がベッドルームへ走りこむと泥棒が追いかけてきていたらベッドルームへ連れて行く事になるのではと思い、入るのを躊躇していると、玄関のほうのバルコニーから誰か飛び降りたような音がしたので、見に行くと下の玄関で誰か屈んでいるのが見えました。

 まだ誰か残っていないのかリビングに戻ったところもう誰もいませんでした。幸い家内は私が大声を出したのをルディに何か起こったのかと思って飛び起きたらしく、泥棒と気づいたときはもういなかったのであまり恐怖心を抱かずにすんだようです。


 警察の呼び方も良く分からないので上階の大家さんを起こして警察を呼んでもらいました。警察は徒歩5分ぐらいのところにあるのですが、呼んでから十数分経って、前の一方通行の道をゆっくりと静かにパトカーがやってきました。


 シッチェスの警察は泥棒が逃げるのを見計らってからやってくるそうです。泥棒は外で車で待っていた仲間がいたのか、あの強い雨の中を入ってきたにもかかわらず、水は一滴も部屋の中に落ちていませんでした。

 逃げるために3箇所の窓が開けてあり、逃げる時も飛び降りた時以外は全く音を立てませんでした。

 几帳面なタイプらしく、手を動かしていたように見えたのは家内のパソコンなどを持って逃げようとして、ハードディスクなどの電源コードを巻いていたようで、コード類が全て取り外しておいてありました。

 何処から室内に入ったのかが謎でしたが、その後窓のひとつが鍵かけても強く引くと開いてしまうことが分かり、と言うことは窓が開いていたから2階に上がってきたのではなく、最初から入るつもりで2階にあがってきたものと考えられます。


 警察が来て外へ出ると、私のパソコンが道路に投げ捨ててありました。ラグビー仲間のウンベルトが日本に旅行するので、持って行ってもらい、修理しましたが、ハードディスクが壊れ、中のデータがすべて失われました。バックアップを取っていなかったので、前回のマジョルカ旅行の写真データもすべてなくなりました。

 

 どうやら私は泥棒の顧客リストに載ってしまったようです。直ぐに引越しをすることにしました。友人からは「海外では安全は金で買うもの」とアドバイスをもらい、予算をオーバーするものの泥棒が入りにくい場所に移りました。


 雨の訪問者に気をつけましょう。