東京外国語大ラグビー合宿の続き

ラグビーの合宿で外交官試験の勉強をする東京外国語「大の選手」の続きです。

PDFをご覧できなかった人のために、東京外大のラグビーの合宿の様子です。

大井さん ブログ Jpeg


 選手のほとんどが大学に入ってからラグビーを始めたので、体ができてなくて、走るのも満足にできない選手もいました。監督の千葉さんはあまり走れない一人の選手(ニックネームはタコ)を「練習の邪魔になるから横で見ていろ」と言って外に出しました。


 私はグランドの外でションボリしているタコを同志社高校1年生の時の自分に重ね合わせていました。私は高校でラグビーを初めて始めた時、15人しかいない選手の中で、ただ一人、ポジションさえ決めてもらえない補欠でした。試合になると15人必要なので体を壊して練習をしていない3年生のマネージャーが試合に出ていました。私はこの時の指導陣の判断は間違っているとは思っていません。


 千葉さんは普段このようなことを言う人ではないので、多分「私がコーチしにくいのでは」、と気を使ったのだと思います。最初の練習試合では、私には相手とほぼ同じようなレベルに見えましたが、大敗しました。


 私は千葉さんの了解を得て、タコを戻し、タコにつきっきりで、時には走りながら後ろから押し、時には前からジャージを引っ張って走りながら、他の選手と全く同じ練習をさせました。


 タコは自分で勝手に自分の限界を決めていたのですが、私に後ろから押されたりすると急に早く走り出します。今まで一番遅いと思っていたタコが早く走り出したので、他の選手はタコより早く走ろうとするので、全員がスピードアップするようになりました。


 しかし気持ちのほうはどうにもなりません。 最後の日には東工大とゲームすることになっていましたが、 東工大は自分達が大敗した相手に大勝しているチームです。 私が贔屓目に判断しても相当力の差はありました。試合の前日、「負けるのは分っているので東工大とは試合をしたくない」と言うような声も聞かれました。 合宿てラグビーより 勉強したいというのにはビックリ しましたが納得できたのですが、強い相手とは戦いたくないという気持ちには頭に来ました。 

 

 「強い相手にどうやって勝つのかを考えるのがラグビーだ、 ラグビーは前に向かって走っている選手が多いほうが勝 つ、 ボールは全て前に蹴れ、FWもバックスも全員全力で前に 向かって走れ 、ボールを持っている相手に一番近い選手が とりあえず捕まえろ、後は皆で押し倒せ」感情的になった のではっきりと覚えていないのですが、この様な言葉で怒ったと思います。


 東工大との試合前の雰囲気はいつもと違いました。もう この時点で涙ぐんでいる選手もいました。タックルも まともに出来ないのですが、全員前に走る意識だけは徹底できていました。

 体力、走力、技術とも相当の差がありましたが、前に向かって走っている選手の数が違いました。一人二人タックルを外されても次から次に走ってくるので、相手の強い選手も前に走ることが出来なくなってしまいました。
 だんだん勢いの差がはっきり出てくるようになり、終わってみると試合は大勝でした。 わずか1週間にも満たなかったのでラグビーの技術は何も教えられなかったのですが、この時の選手はこの合宿で何かを得たようで、千葉さんから聞いた話ではラグビーの戦績も良く、人間としても大きく育ったとのことでした。

 軟弱に見えた選手たちでしたが、最後は岡先生の理論を実証してくれました。

 余談ですが、合宿が終えた時、タコはトイレで一人で大声を出して泣いていたそうです。厳しい合宿をみんなと一緒に乗り越えた嬉し泣きだったそうです。
 その後タコはラグビーを続け、商社の丸紅でもラグビーをして、結婚式には私を招待してくれました。