星名理論と岡理論 53 PERTとドッグイヤービジネスについて 2

ドッグイヤービジネスの時間感覚

 30年以上前のドッグイヤービジネスの時間感覚というものが、どれほどのものであったか、私の体験を書いてみます。
 30年以上前で、まだ携帯電話もほとんど普及していなくて、ラップトップのパソコンが普及し始めた頃です。ビジネスの現場では書類作成にはタイピストワープロが重宝されていた時代で、たまたま、私は字が汚く、文章が下手だったので、ワープロ代わりにラップトップのパソコンを買って持っていました。その頃会社の中で、個人でパソコンを持っていたのは、数人だけでした。
 小さい頃ピアノを習わされていたので、指先は器用で、入力は早い方でした。

 主に使っていたのはワープロ表計算のソフトです。当時はまだE-mailもあまり普及していなくて、メールをやりとりする相手があまりいない時でした。

 IT業界に転職して、驚いたのはその時間感覚です。
 電話はほとんど使わず、連絡は全てE-mailでほとんどのメールが送るとすぐ返事が返ってきます。

 プレミアムキャンペーンをすることになったのですが、突然10日後に開始したいとのことでした。普通キャンペーンを企画するときは、3ヶ月か4ヶ月ほど前に、広告代理店にオリエンテーション(キャンペーンの目的や予算、スケジュール)などを示し、数週間後にプレゼンテーション(提案)を受け、その後、発注し作業を開始するものですが、いきなり10日後にキャンペーンを開始するとのことでした。
 
 しかもイメージアップのキャンペーンではなく、プレミアム(景品つき)のキャンペーンとなると、景品の物を用意しなければならないので、更に時間がかかる物です。月曜日に話を聞いて、来週の水曜日から開始だとのことでした。

 アメリカの広告担当者に相談すると、新聞で全ページ(1ページ15段)広告を出したいとか言うので朝日や毎日の広告料金を伝えたら、あまりに高額でびっくりして「新聞の1ページ広告をするだけで新聞社を買うわけではない」と言って、その20%で、する方法を考えてくれとのことでした。

 こんな無茶苦茶な話、どこの広告代理店も相手にしてくれないので、自分で全て企画し、窓口だけ、今まで取引のあった代理店にお願いすることにしました。

 プレミアムの景品は物を作っている時間がないので、現金の返却(キャッシュバック)として、新聞はラグビーの友人のいた毎日新聞に定価の20%(8割引)で交渉しました。
 普通、新聞に初めて広告を出す時は、朝日か読売で毎日は3番目が多いのですが、「朝日、読売にはすぐには広告は出さない、毎日だけに出す」と言う条件をつけて交渉したので、毎日は大喜びで受けてくれました。

 その後、広告を再開するときには今度は朝日と読売の担当者に連絡し、定価の20%で1社だけ予算があるが、返事の早い方に決めると連絡すると、朝日が数時間後に了承の返事を返してきました。

 朝日と読売は激しく争っており、今回両者が相手にしていなかった毎日には既に全ページ広告が出ており、もし今回外れると、1社だけ広告を出してもらえない、広告営業としては屈辱的なことになるので必死だったようです。
 数時間遅れて、読売も了承の返事が返ってきたのですが、約束通り朝日に出稿しました。

 これも岡先生の戦略の実施順序と時間配分の教えの結果で、普通に3社と交渉していたら定価の80%か70%位が妥当なところだったと思います。
岡先生 グランドの写真
岡先生の教えはビジネスでも生きています。

 交渉の順序を毎日新聞を一番最初に持ってきたので、後の2社は追い込まれて、儲けよりメンツを優先した結果です。
 新聞業界は面白い慣習があり、広告料金は定価が印刷されて配布されており、それが基本となり、多くの広告主は長年の広告実績で、持ち単価と言って、その広告主だけの特別割引の単価が決められており、毎年、その持ち単価が基準となり、その単価の値上げ交渉が行われていました。
 
 ある広告主が例えば、朝日新聞に広告を出す時、広告代理店はA社でもB社でも料金は同じで、その広告主の持ち単価が適用されます。日本のトップクラスの広告主の仕事もしたのでその会社の持ち単価も知っていますが、それよりはるかに安い料金でした。

 多分、いきなり日本でも一番安い料金になったのではないかと思います。