星名理論と岡理論 56 PERTとドッグイヤービジネスについて 5

  30年以上前のIT業界で、よく使われていた言葉で「ドッグイヤービジネス」は犬は人の7倍の速さで歳を取ることから、商品のライフサイクルが普通の商品の7倍の速さで終わると言う意味です。
 それくらい、早い時間感覚で仕事を進めていました。

 キャンペーンを10日間の準備期間で開始するなどは特別な例ですが、他の仕事も同じような時間感覚でやっていました。でも入社した直後はまだ体制が整っていなかったので、非常に優雅な毎日でした。
 会社が六本木にあり、私は徒歩15分くらいの元麻布に住んでいたので、毎日徒歩出勤でした。夜は懇親会が多く、昼は昼食後、時間がある時はすぐ隣の全日空ホテルのプールで30分ほど泳いだりしていましたが、1ヶ月ほどすると状況が一変しました。

 朝は8時には入り、帰りは夜の12時ごろです。当時は広告と広報を担当していたのですが、広告の方はあまり仕事がなく、キャンペーンの時だけ忙しかったのですが、広報の方は大変でした。
 日本の最大の放送局が当時、アナログ放送だったのですが、デジタル技術との融合した番組づくりをするのでその窓口となってしまいました。
 いろいろな技術的なサポートをするわけですが、私にそんな知識はあるわけは無いので、当時最先端の技術を担当していた男女二人にアメリカとの窓口になってもらいました。
 男性は技術者で英語も私よりは上手くて、女性はMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボを卒業したばかりで、日本語はほとんど話せませんでした。

 放送局の要望はあまりにも先進的で、技術的には可能ですが、まだアメリカの放送局でも実施したことのないものでした。打ち合わせは私がセッティングしたのですが、放送局の担当者と技術の日本人が日本語で話し、その後、女性がアメリカの技術者に可能性を確認すると言うものでした。
 そしてその結果を翌日、また同じメンバーで確認し、進めていくというものでした。この二人がいなければ、このプロジェクトが成功することはありませんでした。

 私がした事は打ち合わせで得た知識を放送局の他の部署に行き、更に新しいプロジェクトを押し進めたことでした。いくつかの新しいプロジェクトが立ち上がり、毎晩いくつものプロジェクトの会議が行われるようになり、帰る時間が更に数時間遅くなることになってしまいました。
 驚いたのはこの男女の二人の技術者で私よりも帰るのが更に遅く、いつ寝ているのか不思議でした。
岡先生、田辺カントリー 3人
岡先生と奥様と娘さんです。

 ここでも、岡先生の教えの「今やっておくべきことは何か」は生きていました。まず、その時やっておくべきことは、この新しい技術の可能性を放送局の他の部署のスタッフに知らせることで、これらの技術を使った番組が放送され、その成果が出てくるのは、もっと先になるが、一つの成果が出る前に、この技術の存在を知らしめる事だと、直感しました。

 それからはその放送局に日参して啓蒙活動に集中しました。