ルディとリナ

 ルディが吠えることができなくなった訳

  ルディは本当に男らしい、素晴らしい性格を持っていました。リナが初めて我が家に来た時、なぜか数日はリナを無視していました。妻のはるみがドイツのブレーメンに迎えに行き、バルセロナ空港に迎えに行った帰りの車の中では リナのことを見向きもしませんでした。

  はるみを迎えに行ったつもりが、知らない犬を抱きかかえたはるみを見て、少し嫉妬したのかもしれません。4−5日は、リナの存在自信を認めたくないようなそぶりに感じたのですが、やっと、家族として認めてくれたみたいで、その後はいつものルディに戻って優しくリナに接するようになりました。

 最初はルディを怖がっていたリナも、ルディが優しく接してくれると、突然、わがままな女に豹変してしまいました。食事を与えると、自分の分は急いで食べて、今度はルディのものを食べにいきます。

 優しいルディは困ったようなそぶりを見せながら、「腹が減っているのであれば、仕方がないから、あげるよ」と言う感じで、リナが食べているのをじっと見ています。

 本当はルディに怒ってもらいたかったのですが、ルディはルディなりに「リナがお腹が減っているのであれば、仕方がない」と思っているようです。

 ルディがおこならないので、リナはルディに噛み付いたり(もちろん、アマガミで傷づける気はありません)やりたい放題です。

 ルディは家を守るのは自分の仕事だと思っているみたいで、小さい頃から知らない人が来ると、吠えまくりました。それ以外は吠えることはありません。リナは、もういつも吠えまくっていました。

 リナの無駄吠えには、厳しく叱っている私達を見て、ルディは吠えることを私達が嫌っていると思ったようで、吠えることをやめてしまいました。吠えるのを長い間止めていたルディは声帯が退化したのか、もう吠えることができなくなってしまいました。

 ルディが再び、吠え始めたのは永眠する1年ほど前からでした。その頃のルディは、もう目は見えず、鼻は効かず、耳も聞こえず、声も出せず、4重苦の状態でした。私達の存在を確かめるには、もう、触ってもらうしか、ありませんでした。

  夜、ソファで寝ていたルディが突然オットセイのような奇妙な鳴き声をあげました。驚いたリナは、不審な侵入者がいると思い、大声で吠えまくり、家の中を走り回りました。ルディの声帯は別に悪いわけではなかったので、数日で普通に吠えるようになりました。

 それからのルディは毎日吠えたり、鳴いたりするようになりました。今まで、抱いてもらったり、触ってもらって私達の存在を確かめたかったのに、それを辛抱していたのかと、思うと、本当にルディの凄さを再確認しました。

 本当にすごい犬でした。

ルディ12歳の誕生日
12歳の時のルディ