星名理論と岡理論 36 常識やしきたりを全てひっくり返す。

 星名先生、岡先生の教えを受けた私には、ビジネスの業界の常識や前例、しきたり等は全く関係ありませんでした。私の中にあるのは「今、なにをしておくべきか?」それだけでした。

 星名理論と岡理論  戦略の順序と時間配分で書いたように、重要なのは取り掛かる順序で、未来形ではなく、完了形でなければならないものです。

岡仁詩先生
岡先生 少しセピア
 
 私が働いていた広告業界は派手ですがあまり綺麗な業界ではありませんでした。接待が重要な仕事の一つであり、私は、無口で酒を飲まない、ゴルフをしないなど、広告業界の営業としては全く適性のない男でした。
 ラグビー関係で知人が多く、信頼もあったので、営業成績は悪くないのですが、業界や会社のあらゆるしきたりを破壊しまくりました。

 中堅の広告会社で、オーナー社長が私のことを信頼してくれていて、経営の実質は専務でしたが、「浦野は破茶滅茶だけど、会社のために体を張る男だから好きにさせるように」と言ってくれていたので、好きにさせてもらいました。

 私が課長になり、新しく課を作った時の部下は全員営業経験のない若い男3人でした。
さらに数ヶ月後、その年採用された4年生大学卒の女性が私の課に入りたいと言ってきて、すでに配属が決まっていたその女性を強引に引き抜き、会社は大騒ぎになりました。

 当時は4年制の大学卒の女性は就職が難しく、ましてや広告業界に女性の営業などほとんどいない時期でした。まず、大騒ぎしたのは同じ営業の女性社員でした。営業部に数人女性社員はいたのですが、ほとんどが雑用で、電話番、朝お茶を出したり、コピーを取ったりが主で、「私はそのような仕事は私の課の女性にはさせない」と宣言したためです。

 「私は営業部員を1名配属してもらっただけで、その分、ノルマを上乗せしているので、私の課専任の事務員ではない」と言うのが私の主張です。

 その女性を引き抜いたのは彼女の要望でした。彼女はすでに経営計画室に配属が決まり、働いていたのですが、営業希望で、私の課で働きたいとのことした。
 彼女は小柄ですがバスケットボールの選手で、体力や実行力があり、何よりも美人で人あたりがよく、人を煽てるのが得意で、私の持っていない、営業の必須の能力を全て持っていたからです。

 会社からはもうすでに決まった人事だから、1年待つようにと再三説得されたのですが、私は「待つのは無駄だ、改めた方がが良い事は。いますぐやるべき事だ」。私にとっては未来形ではなく、完了形でなくてはならないものでした。
 最後は「彼女に辞表を出させて、社長に頼んで経験者として再雇用してもらう」と脅かして、人事をひっくり返しました。

 私は彼女に「一人の営業として扱い、女性としては扱わないので、徹夜もあるし、出張や接待の席にも出てもらう」と話しました。

 彼女の偉かったことは私は彼女に「お茶を入れることはしなくて良い」と言ったのですが、朝一番早く来て、みんなにお茶を出し、それから営業の仕事についていました。

 私は私が担当していたスポンサーの仕事を彼女に担当させ、まず「金の交渉は全てお前に任せるから、金の交渉になったら、その場で判断して決めろ。いちいち、持ち帰って相談します、と言うな。少々赤字を出しても構わない」。

 そして、朝のお茶の仕事をやめさせるため、彼女にそのスポンサーに毎朝、1ヶ月間、直行して担当者を待ち受け、喫茶店でお茶を飲むように命じました。

 彼女は順調に成長し、数年後、今まで一番大きな新規の仕事をとってきました。