星名理論と岡理論 69 受動的思考から主体的思考へ 11

ディフェンス(タックル)での主体的思考

 タックルはディフェンスがするものですから、タックルするポイントはデイフェンスする側が決めると思いがちですが、相手に走り込まれてタックルするのと、相手のスピードを殺してタックルするのでは大きく違います。

 ラグビーは本質的には地域を取り合うゲームです。ボールを持って相手陣に走り込んでトライを取るものですが、ルールで、スローフォワード(ボールを前にパスをすることが出来ない)、オフサイド(ボールを持った選手の前の選手はプレーできない)などの制約があります。

 最前線でスクラムラインアウト、ラックなどで相手と戦い、ボールを奪取してバックスにボールをまわしたフォワードは、ボールが後ろにパスをされながら進むので、全員オフサイドの位置にいて、その段階ではプレーに参加できません。

 バックスの最も重要な役割は味方のフォワードを前に走らせることです。

  だから星名先生の「極端に浅い(相手に近い)アタックライン」と私が称したアタックは非常に相手陣に近い所で勝負するので、突破すると前回の記事に書いたように、すぐトライに結び付きます。

 もし失敗したにしても、フォワードがあまり大きく後ろに帰る必要がなく、もし突破すれば、すぐ前に向かって走り、プレーに参加できるので非常に有効です。

 逆にディフェンスでは主体的思考でトップスピードで飛び出すことにより、相手のアタックラインが前に出てくることを控えるので、タックルラインを相手側に押し込む結果となり、タックルをはずされたとしても、フォワードのカバーディフェンスは前に向かって走ることになり、非常に有利に展開出来る。

 体重の軽い私(当時173センチ、60キロ弱)はセンターで相手がトップスピードで走ってくれば、待ってタックルをするのが苦手で、相手がトップスピードになる前に相手以上のスピードでタックルをすることを心がけていました。

 当時(多分今でも)タックルラインをアタックする側が決めると言う発想の選手はいなくて、ほとんどの選手はタックルラインを無意識に意識してスタートしているので、私がディフェンスで想定できるタックルポイントへ、最短距離をトップスピードで走っていくと、少しスピードを殺して受けるポイントを後ろにするか、もしくは横へはずそうとしました。


飛び出すディフェンス1

そのため私より大きな相手にも当り負けすることもなく、また相手が前に走ってこないのでタックルポイントを相手側に押し込む事になり、もしタックルをはずされたとしても、次のカバーディフェンスが前に走りながらのタックルが可能です。

 当時デイフェンスラインは横一線に揃えて出るのが常識でしたが、私はあえて常識を無視し、直線的にまっすぐに想定できるタックルポイントへ全力で飛び出しました。走力は皆同じようなものですが、他の選手は横一線に揃えることに意識が向き、スピードを少し殺していたからです。この私の無茶苦茶な飛び出しは相手にプレッシャーとなり、相手のアタックは通常より、前に出るのを抑えるので。タックルポイントを相手側に押し込むことになり、味方のフォワードは前に走ることが可能になりました。
 
 星名先生の主体的思考はあらゆる場面で適用可能です。