ルディとRudy

 1996年、本人訴訟を行うことになり、裁判についていろいろ勉強した。当然見るテレビや映画は法廷物になった。偶然に書店で見つけたジョン ・グリシャムの「原告側弁護人」(原題The Rainmaker)の主人公がこれもまたRudy(日本語訳ではルーディ)である。

 John Grishamは1955年アメリカ、ミシシッピー生まれ。著書に「評決の時」「法律事務所」「ペリカン文書」「依頼人」等があり、法廷物のブームを作った作家である。

 

 メンフィスのロースクール卒業目前のルディは、内定していた法律事務所の合併騒ぎで、採用が取り消され、自己破産に追い込まれて、崖っぷちに追い込まれたが、持ち前のバイタリテイでこの危機を乗り越えて行く。

 法律業務実習の授業で知り合った依頼人の巨大悪徳保険会社との訴訟を一人で行うことになる。巨大企業の高名な弁護士チームを相手にまだ経験の浅いルディが一人で立ち向かい、最後に勝利するこの小説は、私に法廷戦術のアイデアを与え、勇気づけるものとなった。

 

 我家のルディは非常に寂しがり屋ではあり、甘えん坊ではあるが、はっきりとした主張を持っており、主張している時にはいくら脅かしても後に引くことはない。

 彼が大好きな有栖川公園に行く時には、走っていくことと、喜びの声を上げることに決めているらしい。まず部屋を出てエレベータに乗り、外へ出て、走り始めるまでは、喉の奥から絞り出すような声でキャンキャンと喜びの声を出す。

 この時は絶対声を出すと決めているらしく、いくら怒っても声を出すのを止めない。口を手で押さえて、口が開かない様にしても、喉の奥からまだ声を出している。そしてそれは、マンションを出て、前の道を渡り、走り始めるまで続く。

 

 また彼は我家を守ることが自分の仕事だと思っているらしく、郵便配達や新聞料金の集金する人が、チャイムを鳴らして、ドアの所で待っている時は、ものすごい大きな声で吠える。知らない人はどんな大きな犬かと思い、恐る恐るドアを開けて、あまりに小さな犬なので再度びっくりするようである。

 

 近所迷惑になると思い、口をつかんで、絶対声を出せないようにして、叱るのだが、その目は、自分は絶対に悪いことはしていないという、意志がはっきりと現れた挑戦的な目をして、睨み返してくる。そしていくら叱られても、これだけは譲れないと訴えるように、睨み返しながら、首を強く振って、口をつかんでいる手を振り払おうとする。