星名理論と岡理論 62 受動的思考から主体的思考へ 4

  常識を打ち破る
 
 今でもほとんどの選手はタックルする場所はタックルする側(ディフェンス)が決めると思い込んでいます。常識的にはこれ以外は考えられません。
 
 しかし、ラグビーには、「ボールを持っていない選手にはタックルをしてはいけない」と言う不変のルールがあります。ディフェンスのタックルしようとしている選手が想定していると思われる場所に、もしボールを持たないで走り込めば、タックルされることはありません。

 しかし、もう一つの不変のルール「ボールは前にパスをしてはいけない」があります。

 そのためには内側の選手(SO)より、私(1CTB)が早くスタートしてまず、想定されていたタックルラインを越えて走り込んでおく必要があるので、スクラムからボールが出る前に一番早くスタートして前へ走り出します。
星名理論 概念図 2 新

 相手はまだボールがスクラムの中にあるので、まだスタートできません。
 次にSOがスクラムからボールが出ると同時に前へ走り出します。少し遅れて相手のディフェンスが前へ走り出します。
 SOは思い切り前へ出て、伸びる長いパスを出します。
 私(1CTB)はタックルラインを越えて走り込みますが、対面の選手はそのまま前に走ると私とぶつかることになり、ノーボールタックルで反則となるので、立ち止まって私がボールを受けるのを待つことになります。
 対面の選手が立ち止まった瞬間に横へ思い切り走ります。
 立ち止まっている選手と助走をつけて走り込んでいる私とでは、私の方が有利なので、相手は追いつきません。
 その間に、真っ直ぐ走っていたSOは私より前まで走り込んでいるのでパスはほぼ真横で、前ではないので、スローフォワードにはなりません。
 ボールを受けに前に走り出した私はボールを受けた途端に、もうゲインラインの近くまで走り込んでいます。

 これが星名先生が発案された、私が「極端に浅いアタックライン」と呼んでいたものです。
 もしタックルされたとしても想定されたタックルラインをはるかに越えており、ゲインラインに近いところになり、FWが後ろに向けて走ることはなくなります。

 タックルされる場所はディフェンスではなく、アタックする私が決めていることになります。これ以後、私の考え方は相手の動きに対応する受動的なものから、自分が決めて相手に対応させる主体的な思考に変わりました。

 この時の星名先生とのやりとりは次のとおりです。